3000年10月01日

高齢犬の頸部にできた水腫の局所麻酔による摘出

18歳半のダックスフントの首の頸部に以前から水泡状の嚢胞があり1か月おきに穿刺にて中の漿液を抜いていました。飼い主の方は、高齢犬ではあるものの手術を希望されたので、手術を行う事になりました。犬の性格と腫瘤の形状と高齢なのを考慮して局所麻酔での摘出手術を行いました。
術前検査では、血液検査、レントゲン検査ともに異常ありませんでした。
一応、犬が暴れるようなら全身麻酔を行う可能性もあるので血管確保は行いました。
腫瘍周辺8か所に局所麻酔を施し手術を実施しました。

下:腫瘤周辺に滅菌布を装着したところ
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手術では、皮膚はラジオ波メスで全周の皮膚を切開し、皮下識を分離してシーリンブシステムで血管ごと組織をシールドして切除しました。出血、痛みはほとんどありませんでした。全身麻酔は、施さずに局所麻酔だけで摘出できました。

下:ラジオ波メス、シールドシステムで切除した後の画像
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下:切除後は、皮膚は、抜糸の必要のない吸収性縫合糸で埋没縫合しました。
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下:摘出した水泡状の腫瘤(嚢胞状) 
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特に悪性所見はありませんでした。
posted by サム at 09:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

兎の試験開腹

7歳3か月のメスのウサギが、血尿があり夜間病院で診察を受けました。そちらの診断では、各種検査で子宮に子宮蓄膿症がある疑いがあり手術が必要な趣旨を言われ当院に来院されました。
当院の検査では、レントゲン検査では食滞あり、子宮に関しては不明瞭でした。エコー検査では、確かに異常はあるようだが不明瞭でした。
飼い主の方は、すでに手術の覚悟をしており手術を強く希望しておりました。よって、異常がない場合も説明した上で試験開腹術を行いました。

*試験開腹術とは、腹部疾患の疑いを否定できずに診断の目的で開腹する手術です。開腹して腹腔内臓器の状態を直接見て判断する方法です。試験的にに開腹を行い異常があった場合に各種手術を行い、異常がない場合はそのまま閉腹する手術です。

手術では、盲腸、小腸に食べたものが大量にあり完全に食滞状態でした。卵巣子宮は若干大きい程度でしたが、子宮の一部が少しマス状に軽度に腫れている部位が肉眼上数か所あり子宮癌の疑いもあり、卵巣子宮全摘出術を実施しました。

下:手術中の画像 卵巣、子宮
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下:摘出した卵巣、子宮
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手術後は、当日退院 その後は、食欲もあり経過良好でした。

その後の病理組織検査では、1か所に平滑筋肉腫、左右子宮を含む数か所に腺癌との結果でした。
偶然に、試験開腹で異常が発見できてよかったと思われました。
ウサギの腺癌は子宮癌では一番多いタイプのもので、中年〜高齢の雌のウサギに発生する悪性腫瘍です。この腫瘍の性質上、腹部および胸部のモニターが今後必要です。
 
posted by サム at 08:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

消化管内異物

消化管内異物では、内視鏡で除去、手術で摘出以外に何もせずに様子観察でお尻から出るのを待つケースも多くあります。

6歳半のシーズが、一昨日から嘔吐が頻回するとの主訴で連れて来られました。レントゲン検査をすると胃内に2個の異物が確認されました。異物は、胃の出口の幽門部付近にあり、そこで停滞して嘔吐を誘発しているようでした。内視鏡での異物除去も考えましたが、1日様子観察しました。

下:来院1日目のレントゲン写真 ラテラル像 矢印のところに異物があります
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下:来院1日目のレントゲン写真 VD像 矢印のところに異物があります
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翌日の診察では、嘔吐はなくなりました。レントゲン検査を行うと、異物は胃内から腸に移動しているのがわかりました。大きさから考えて通過すると判断してそのまま様子観察にしました。

下:来院2日目のレントゲン写真 VD像 矢印のところに異物は移動しています。
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翌々日の診察では、状態は改善したとの事でしたが異物はまだ出ていないとの事でした。そろそろ肛門付近に移動していると思い、直腸診を行うと異物が1個指先に触われて指で1個だけ体外に取り出しました。

下:来院3日目 直腸検査で除去した異物のうちの1個 少し固く表面が凸凹したものでした。何かは不明でした・・
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下:来院3日目のレントゲン検査 VD像 レントゲン検査で残り1個は骨盤腔内の直腸にありました。
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骨盤腔内の直腸にあるもう1つの異物もそのまま自然に排出されると思います。

異物摂取では、動物の大きさ、年齢、性格や異物の種類、形、大きさ、経過時間や飼い主の方の希望などによりそれぞれ対応は違います。

その後、残りの1個もすぐに出たとの事でした。

posted by サム at 07:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

脾臓の一部に大きな腫瘤ができて脾臓摘出手術をおこなった症例

13歳3か月のアメリカンコッカースパニエルが昨夜から元気がないと連れて来られました。

右上腹部あたりに痛みがあるようで、レントゲン検査で脾臓に腫瘤があるのが分かりました。また、血液検査で強い炎症反応(CRP20以上で測定不能)があるのが分かりました。その後、1週間内服で炎症を抑える治療をすると炎症の数値は正常値になりました。超音波検査では、脾臓の腫瘤の血流は少なく、脾臓の腫瘍(悪性の血管肉腫)の疑いが強いものの、腫瘍ではない可能性もあり、また手術に耐えられる状態に改善したので高齢犬でしたが試験開腹手術を実施しました。

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上:CRレントゲンラテラル画像(右下画像 左が頭側、右が尾側) 腹部に大きな腫瘤があるのがわかります(矢印)

試験開腹手術では、脾臓の一部に大きな腫瘤がありましたが、肝臓などその他に異常がないので、脾臓摘出手術を行うことにしました。脾臓から走行する血管をシーリングシステムでシールドしてなるべく結紮糸を使わずに大きな腫瘤を脾臓ごと摘出しました。摘出後は、悪性腫瘍の可能性もあるので3リットルの洗浄液で腹腔内を洗浄して閉腹しました。手術時間は90分でした。手術後の覚醒も非常に良く、元気、食欲もあり翌日退院しました。摘出した腫瘤のある脾臓は約500gの重量でした。


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上:手術中の画像 画像にノイズを入れてぼかした画像です。


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上:摘出した脾臓の画像 脾臓の一部に腸間膜を巻き込んだ大きな腫瘤があるのが分かります。腫瘤の一部は以前に少し破裂を起こした形跡があり、そこに腸間膜が癒着していました。見た目では、悪性の血管肉腫のような感でした。 画像にはノイズを入れてぼかした画像です。

病理組織検査:後日の病理組織検査では、脾臓結節性過形成、血管拡張症を伴う との検査結果でした。今回の症例では、リンパ濾胞過形成は脆弱な組織で、時に破裂して出血を起こす可能性があるとの所見でした。要するに、今回の症例の脾臓にできた腫瘤は、悪性腫瘍ではなく手術後の予後は良好との事でした。 

手術をしてから1か月後に、レントゲン検査、血液検査を行いましたが、その後の炎症などの異常は全くなく完治しました。

脾臓にできた腫瘤は、手術前の血液検査、レントゲン検査で麻酔・手術ができる状態ならば、試験開腹を行い、試験開腹手術では脾臓以外に異常がなし(転移所見がなければ)今回のように悪性腫瘍ではないケースもあるので、見た目で判断せずに状態が良ければ腫瘤ごと脾臓摘出を行った方が良い場合もあります。
posted by サム at 06:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

子猫のコクシジウム症

生後1か月半の猫が健康診断で連れて来られました。検便の検査でコクシジウムが寄生しているのがわかりました。

下:検便の顕微鏡写真 (×100倍) 丸い小さいのは全てコクシジウムです

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下:検便の顕微鏡写真 (×400倍) 顕微鏡を高拡倍した画像

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これらは、虫卵ではなくオーシスト(oocyst)と呼ばれています。通常の線虫類では、消化管内に寄生虫がいると虫卵といわれるものが便とともに排泄されます。線虫類では、外界から体内に侵入しないかぎり消化管内で寄生虫が増える事はありません。しかし原虫類に分類されるコクシジウムでは、このオーシスト自体が寄生虫です。よってほかの線虫類とは違って、消化管内で1個が2個に、2個が4個にと分裂して増殖を繰り返します。

写真をよく見るとオーシストの中の構造物スポロシスト(sporocyst)が1個のものと2個のものがあるのがわかります。スポロシストが分裂してオーシストの壁が破れて1個から2個へと増殖するようです。

猫では、臨床上、大きく分けると2タイプのコクシジウムがいるようです。大型のコクシジウム I.Felisと小型のコクシジウム I.rivolta が検便で見つかります。経験上、小型のタイプでは無症状が多く、大型のタイプでは下痢症状が出やすい傾向にあると思われます。 今回のは、大型のI.Felisでした。既に、下痢の症状もあり、すぐに駆虫薬の投与を開始しました。
posted by サム at 05:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

高齢雌の陰部にできたポリープ

12歳4か月のシーズが、陰部より出血がある。何かできものがあると連れて来られました。
見ると、外陰部の入り口にポリープがありました。

下:外陰部にポリープがあるのが分かります。

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出血が継続していたので、血液検査、レントゲン検査を行った上で手術で摘出しました。
手術では、シーリングシステムを使用して血管結紮なしで手術を行いました。

下:シーリングシステムでポリープを切断するところの画像

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下:摘出した有袋状のポリープ(右)と、その中に溜まっていた血液の塊り(左)

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病理組織検査では、線維性ポリープでした。
このような膣の良性病変(線維性ポリープ、ポリープ状線維腫、線維平滑筋腫、平滑筋種など)は未避妊の雌犬でよく認められるもおです。切除により予後は良好ですが、再発を防ぐには避妊手術がよいとされています。今回の症例では、ポリープ切除と避妊手術をお勧めしましたが、高齢なのと以前から僧房弁閉鎖不全症を起こしているのでポリープだけの手術を希望されました。
posted by サム at 03:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

再発する口腔内の痛み(痛みの歯の場所が特定できない)に対して抜歯を行った症例


慢性的に口に痛みがあり、血液検査で炎症の数値が高い状態が何度も再発する犬がいました。この子は、噛み癖があり、また口の痛みから口腔内を観察することはできないワンちゃんでした。抗生物質を内服すると一時的に炎症の数値が下がり、口の痛みも緩和するが薬を止めると数週間で痛みが再発しました。
なかなか口の中を見せてくれないので、全身麻酔でデンタルケアーのついでに歯をチェックすると上顎の前臼歯に歯肉炎があり、ここが原因だと特定できないが治療的な診断として抜歯を行いました。

下:麻酔下で上顎の前臼歯に異常がありました。
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下:抜歯後の患部 歯肉部分に大きな穴ができました。
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抜歯した歯の根本をスライドグラスに塗抹した標本を染色すると炎症細胞と多数の細菌が観察されましたので、この歯の根本には強い炎症があると判断されました。はっきり分かる膿はないものの後眼窩膿瘍と診断しました。

下:その部分は吸収性縫合糸で縫合して歯肉が再生しやすいように処置を施しました。
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下:抜歯した前臼歯 歯の根本は3本ありここに炎症がおきるケースがあります。
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通常の後眼窩膿瘍は、眼の斜め下部分が腫れたり膿が出てきて分かるケースがほとんどですが、今回のケースではそのような症状はなく、麻酔にて確認して抜歯に至りました。

その後、口内の痛みはなくなりました。
posted by サム at 02:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

尻尾の根本付近にできた大きな腫瘍

11歳6か月 雄(去勢)のチワワの尻尾に以前からある腫瘍が大きくなったと連れて来られました。身体検査で、僧房弁閉鎖不全症(levine 2/6 雑音あり)、血液検査以上なし
尻尾の根本にあり腫瘍はすでにかなり大きく、将来的に破裂、化膿を考え、腫瘍だけ切除は困難と判断して尻尾の根本から断尾手術をする事になりました。

下:手術前の腫瘤

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手術では、ラジオ波メス、シーリングシステムを用いて短時間で血管結紮なしで手術終了。皮膚は吸収性縫合糸で埋没縫合を行いました。腫瘍はかなりおおきく断尾手術もマージン(正常部、異常部の境界)もぎりぎりの状態でした。

下:手術後すぐの患部の画像

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下:手術後しばらくしての患部 綺麗になりました。

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後日の病理組織検査では、肛門周囲腺過形成、肛門周囲腫でした。良性腫瘍かつマージンも問題なく経過良好でした。


posted by サム at 01:00| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする